令和05年(2023年)6月定例会 議員倫理条例反対討論

◆大山たかお 議員 
ただいま議題となりました議案第76号、那覇市議会議員政治倫理条例制定について、反対の立場から討論を行います。
本条例は、先ほど委員長からもありましたように、久高前議長の議長室における金銭の授受に関わる事件が大きなきっかけとなりました。
委員の皆様、大変忙しい中、条例を作っていただき誠に感謝申し上げるとともに、市民の皆様方には、同じ議員として反省を行うとともに、謝罪を申し上げたいと思います。
私が議員倫理条例を反対することは、多くの批判や、もしかしたら大山も何かあるのではないかと言われることも覚悟の上で、議員として思うところがありますので討論させていただきます。
議員は、市民の皆様から信任を頂いて議員になっています。
我々議員は選挙制度によって選ばれた市民の代表です。同じく市民の代表として選ばれた首長行政の監督や提言などを行う二元代表制の片翼でございます。
久高前議長の議長室における金銭の受け渡しは、非常に不適切であり、市民、特に久高前議長に対し投票していただいた方の信頼を大きく裏切る行為であったと思います。
この条例で一番の違和感を覚えるのは、第19条議員報酬の停止であります。これは私も全員協議会で質問させていただきました。
議員が、被疑者または被告人として逮捕されると議員報酬の停止を行うという条例でございます。
ここで私が問題としたのは、推定無罪の原則でございます。
日本弁護士連合会のホームページによりますと、「『無罪の推定』とは、犯罪を行ったと疑われて捜査の対象となった人(被疑者)や刑事裁判を受ける人(被告人)について、刑事裁判で有罪が確定するまでは『罪を犯していない人』として扱わなければならない」とする原則です。
「『無罪の推定』は、世界人権宣言や国際人権規約に定められている刑事裁判の原則であり、憲法によっても保障されています」と記載されています。
なぜこのような推定無罪ということが制定されたのかと言いますと、第二東京弁護士会のホームページによりますと、「刑事裁判で有罪となれば、罰金刑、懲役刑、死刑などの刑罰が与えられ、市民の財産、自由、そして場合によっては生命までをも奪うことがあります。それだけに、被告人が有罪であるというはっきりとした証拠がなければ、このような結論を出してはなりません。過去の歴史をみると、きちんとした証拠がないまま、『疑い』だけで市民の皆さまの財産、自由、生命が奪われることがありました。このように、人類が大きな犠牲を払った歴史から学んで、市民の権利、人間の尊厳を守るための知恵として、『無罪推定』、『疑わしきは被告人の利益に』などの原則が導かれたのです」とうたわれています。
また、議員については特別地方公務員ですから、地方公務員法に該当しないものの地方公務員法には休職について以下のように書かれています。
地方公務員法第28条第2項「職員が、次の各号に該当する場合においては、その意に反してこれを休職することができる」。
その第2号には「刑事事件に関し起訴された場合」とうたわれています。
その際の給与につきましては那覇市職員の給与に関する条例第29条第3項「職員が法第28条第2項第2号に掲げる事由に該当して休職にされたときは、その休職の期間中これに給料、扶養手当、地域手当及び住居手当のそれぞれ100分の60以内を支給することができる」と書かれております。
つまり、那覇市役所職員は、刑事事件に起訴され休職した場合は、給与等の100分の60以内を支給することができるということであります。
仮の話をするのは大変失礼かもしれませんけど、仮に私が無実の罪で第19条に規定するもので逮捕されたとします。
逮捕から裁判を行うためには長期の期間がかかります。本条例によると、その間、議員報酬は停止をするわけです。
お金をたくさん持っている議員ならば問題はないのでしょうが、私のような選挙費用でさえ回収することが、現在でも終わらない議員にとってはまさに死活問題となります。
また、特に残された妻と子は、おそらく社会的にも大きな疑いをかけられることでしょう。そのうえ、生活資金がないのです。妻は思い詰めてしまうかもしれません。無実の罪なのに。
そういった観点からすると、政治倫理条例を作ることは、議会の信頼を作るうえでは重要だと思いますが、国際的な人権条約、関係法律等の推定無罪の原理原則の適合性などを含め議論をより重ねる必要があったのではないかと思います。
この条例が制定されたことで、無実の罪で苦しむ関係者が発生する可能性があると懸念します。そして関係法令などと照らし合わせ、本条例が定められたことによっては、無実の罪の方から、那覇市または那覇市議会が訴えられるなどの可能性は、国家賠償法により否定はできません。
長い時間を過ぎれば、現在、この議場に座っている方が全て議場からいなくなる日が来ると思います。そのような中で、ここにはいない議員が、国家賠償法により訴える可能性があります。その時の責任については、制定時の議員としての責任を感じております。
自治立法からすると問題のない条例づくりと、そして全員協議会でも質問をしましたが、言論の府として議場での様々な発言について保護することが私が議員として一番のやるべきことだと思っております。
しかしながら、今のタイミングで提案されておりますので、私も結論を出さざるを得ません。
よって、以上の理由を総合的に判断した結果、今回の本条例制定については、より長期的に検討を踏まえるべきだと判断し、現段階においては賛成いたしかねるという立場を表明させていただきます。議員各位の御賛同をよろしくお願いします。

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