那覇市議会議員政治倫理条例
(趣旨)
第1条 この条例は、那覇市議会基本条例(平成24年那覇市条例第78号)第6条第2項の規定に基づき、市政が市民の厳粛な負託によるものであることに鑑み、その受託者たる那覇市議会議員(以下「議員」という。)が、市民全体の奉仕者として人格及び倫理の向上に努め、その権限又は地位に基づく影響力を不当に行使して自己又は特定の者の利益を図ることのないよう必要な措置を講ずることにより、市政に対する市民の信頼に応えるとともに、公正で開かれた民主的な市政に寄与するために必要な事項を定めるものとする。
(議員の責務)
第2条 議員は、市民全体の代表者として高い倫理性が求められていることを常に自覚し、第4条に規定する政治倫理規準を遵守するとともに、自ら研さんを積み、資質を高め、良心及び責任感を持って議員の品位を保持しなければならない。
2 議員は、自己の権限又は地位に基づく影響力を不当に行使して、自己又は特定の者の利益を図ってはならない。
3 議員は、法令、条例等を遵守し、公正な職務執行を妨げるいかなる不当な要求にも屈してはならない。
4 議員は、第4条に規定する政治倫理規準に違反する行為(以下「政治倫理規準違反行為」という。)があるとの疑惑を持たれたときは、自ら誠実な態度をもって、率先して事実を明らかにし、説明を行い、疑惑の解明に当たるとともに、その責任を明確にしなければならない。
(議会の役割)
第3条 議会は、市民に対する説明責任を果たし、並びに公正性及び透明性を確保しなければならない。
2 議会は、議員に対し、政治倫理に関する学習の機会を毎年提供するものとする。
3 議会は、議員が会派(那覇市議会基本条例第5条第1項の規定により結成する「会派」をいう。第7条第2項において同じ。)内及びその他の議員間で相互に次条に規定する政治倫理規準を共有し、これを遵守できるよう努めなければならない。
(政治倫理規準)
第4条 議員は、次に掲げる行為をしてはならない。
(1) 市政運営若しくは議会運営に著しく影響を与え、又は市民の信用若しくは信頼を著しく失墜させる行為であって別に定める行為
(2) 職務上知り得た情報を不当な目的のために使用する行為
(3) 反社会的勢力を利用し、若しくは反社会的勢力に利用され、又は反社会的勢力の活動に関与する行為
(4) その権限又は地位を利用したいかなる金品(議員の後援団体に対するものを含む。)の授受
(5) 政治資金規正法(昭和23年法律第194号)等の法令に違反する寄附等のほか、政治活動に関し、政治的又は道義的な批判を受けるおそれのある寄附等(議員の後援団体に対するものを含む。)の授受
(6) 市から補助金を受けている団体又は市の業務委託を受けている団体の役員
に就任した場合において、その団体を自己の利益のために利用する行為
2 議員は、市、市が構成団体となっている一部事務組合等、那覇市公益的法人等への職員の派遣等に関する条例(平成13年那覇市条例第33号)第2条第1項各号に掲げる団体及び同条例第10条各号に掲げる株式会社並びに指定管理者(地方自治法(昭和22年法律第67号)第244条の2第3項の規定による市の指定を受けた者をいう。)(以下この項において「市等」という。)の職員に対し、次に掲げる働きかけをしてはならない。
(1) 市が行う指定管理者の指定への関与
(2) 市等が行う許可、認可その他の処分、契約又は金銭の給付の決定への関与
(3) 市等が行う工事等の請負契約、業務委託契約又は物品購入契約への関与
(4) 職員の採用、昇任、降任、転任その他の人事への関与
(5) 前各号に掲げるもののほか公正な職務執行を妨げる行為
3 議員は、次に掲げる人権侵害行為等をしてはならない。
(1) 人権侵害のおそれがあるハラスメント行為
(2) 公職にある者としての発言、インターネットその他の媒体を利用した情報発信による誹謗中傷、風評の流布等の名誉毀損
(3) 人権侵害行為を行うことの煽動
(4) 第三者の行った人権侵害行為に対する賛成の意見の表明その他の人権侵害行為を助長する行為
4 第1項第2号及び第6号並びに第2項の規定は、議員の職又は役員を退いた後も同様とする。
(働きかけの禁止)
第5条 何人も議員に対し、政治倫理規準違反行為を求める働きかけを行ってはならない。
(審査等の要求)
第6条 公職選挙法(昭和25年法律第100号)第9条第2項の規定により議員の選挙権を有する者(那覇市の選挙人名簿に登録されている者に限る。以下この項及び次項において「有権者」という。)は、政治倫理規準違反行為があると認められる議員があるときは、有権者50人以上の連署をもって、議長(当該議員が議長である場合にあっては、副議長。第7条第2項第4号、第12条第2項及び第20条を除き、以下同じ。)に対し、審査等の要求をすることができる。
2 前項の連署における署名が有効となる有権者は、当該署名に係る審査等の要求が行なわれた日の直近に行われた公職選挙法第22条第1項又は第3項の規定による那覇市の選挙人名簿の登録において当該選挙人名簿に登録されている者(次条第1項において「選挙人名簿登録者」という。)とする。
3 市長、教育委員会、選挙管理委員会、監査委員、公平委員会、農業委員会、固定資産評価審査委員会、消防局長、上下水道事業管理者及び市が設立した地方独立行政法人は、政治倫理規準違反行為があると認められる議員があるときは、議長に対し、審査等の要求をすることができる。
4 第1項又は前項の審査等の要求(以下「審査要求」という。)をする際には、政治倫理規準違反行為の内容その他必要な事項を記載した審査要求書にこれを証する書類等(次条第2項第4号において「証拠書類等」という。)を添えて、議長に提出しなければならない。
5 審査要求は、審査の対象となる政治倫理規準違反行為と疑われる行為の日又は刑事事件により有罪の判決を受けた日が属する議員としての任期中に行わなければならない。ただし、当該任期を経過した後であっても、当該議員が再選されている場合は、再選後の任期期間に限り、審査要求をすることができる。
(審査要求の受理等)
第7条 議長は、審査要求書の提出があったときは、これを受理するとともに、前条第1項の規定による審査等の要求に係る審査請求書の場合は、直ちに那覇市選挙管理委員会に対し、同項の連署において署名した者が選挙人名簿登録者であることの確認を求めるものとする。
2 議長は、審査要求が次に掲げる事項を満たしているか否かについて、会派の代表で構成される会議に確認を求めるものとする。
(1) 前条(第4項を除く。)の規定に反しないこと。
(2) 審査要求書の記載事項に不備がないこと。
(3) 審査要求の内容が政治倫理規準に関する内容であることが明らかであること。
(4) 証拠書類等が、議長が別に定める書類等に該当すること。
3 議長は、審査要求に不備があると認められ、かつ、それが補正することができるものであるときは、審査要求書を提出した者に対し、相当の期間を定めて、その補正を求めるものとする。
4 議長は、審査要求書を提出した者が前項の規定による補正の求めに応じないとき又は審査要求が第2項第1号に掲げる事項を満たしていないときは、当該審査要求を却下するものとする。
(審査要求に係る手続の併合又は分離)
第8条 議長は、必要があると認める場合には、数個の審査要求に係る手続を併合し、又は併合された数個の審査要求に係る手続を分離することができる。
(審査会の設置等)
第9条 議長は、審査要求が第7条第2項各号に掲げる事項を満たしていることを確認したときは、那覇市議会議員政治倫理審査会(以下「審査会」という。)を設置する。
2 議長は、前項の規定により審査会が設置されたときは、速やかに審査要求書を提出した者及び審査要求の対象となる議員(以下「審査対象議員」という。)に対し、その旨を通知するものとする。
(審査要求の審査等)
第10条 審査会は、次に掲げる事項について審査を行うものとする。
(1) 政治倫理規準違反行為の存否
(2) 政治倫理規準違反行為があったと認定した場合における当該行為をした議員に対する措置
2 第8条の規定は、審査会における前項の規定による審査の手続について準用する。
3 第1項第2号の措置は、次のとおりとする。ただし、2以上の措置を併せて講ずるよう決することを妨げない。
(1) 議場における議長の注意
(2) 議場における謝罪
(3) 一定期間の出席停止勧告
(4) 議長、副議長、那覇市議会委員会条例(昭和47年那覇市条例第83号)第2条の常任委員会の委員長その他の役職の辞任勧告
(5) 地方自治法第196条第6項の議員のうちから選任される監査委員の辞任勧告
(6) 議員が就任する附属機関の委員の辞任勧告
(7) 市が構成団体となっている一部事務組合等の議員辞職勧告
(8) 議員辞職勧告
(9) その他必要と認める措置
4 審査会は、政治倫理規準違反行為がないと決したときは、審査対象議員の名誉を回復する措置を決定し、議長に報告するものとする。
5 審査会は、審査のため必要があると認めるときは、審査対象議員、審査要求書を提出した者その他審査要求に関係する者に対し、出席を求め、説明若しくは意見を聴取し、又は報告を求めることができる。
6 審査対象議員、審査要求書を提出した者その他審査要求に関係する者は、前項の規定による求めがあったときは、これに応じなければならない。
7 審査対象議員は、審査会の会議に出席し、書面又は口頭により弁明することができる。
8 審査会は、審査対象議員、審査要求書を提出した者その他審査要求に関係する者が第5項の規定による求めを正当な理由なく拒否したとき、又は虚偽の資料の提出若しくは陳述をしたときは、その旨を公表するものとする。
9 審査会は、審査を終えたときは、その審査の結果を議長に報告する。
(審査結果の通知及び公表)
第11条 議長は、審査会から審査結果の報告を受けたときは、審査要求書を提出した者及び審査対象議員に当該審査結果を通知するとともに、公表するものとする。
(審査会の組織)
第12条 審査会は、委員5人以内で組織する。
2 委員は、地方公務員法第3条第3項第2号の特別職とし、次に掲げる者のうちから議長が委嘱する。
(1) 法律又は行政に関して優れた識見を有する者
(2) 学識経験者
(3) その他議長が必要と認める者
3 委員の報酬は、那覇市報酬及び費用弁償等に関する条例(1958年那覇市条例第4号)別表法律又は条例により委員会等の委員に委嘱された者及びこれに準ずるものとして特に市長が認める特別職の職員の部の報酬額とする。
4 委員の費用弁償は、那覇市報酬及び費用弁償等に関する条例第8条第2項第2号の額とする。
5 委員は、第10条第4項又は第9項の規定による報告があったときは、解嘱されるものとする。
6 審査会に会長及び副会長を置き、委員の互選によりこれを定める。
7 会長は、会務を総理し、審査会を代表する。
8 副会長は、会長を補佐し、会長に事故があるとき又は会長が欠けたときは、その職務を代理する。
(審査会の会議)
第13条 審査会の会議は、会長が招集する。ただし、会長及び副会長を互選する会議は、議長が招集する。
2 審査会は、委員の半数以上が出席しなければ、会議を開くことができない。
3 審査会の会議の議事は、出席委員の過半数で決し、可否同数のときは、会長の決するところによる。
4 審査会の会議は、公開とする。ただし、出席委員の3分の2以上の多数で議決したときは、非公開とすることができる。
(守秘義務等)
第14条 審査会の委員は、職務上知り得た秘密を他に漏らしてはならない。その者が委員でなくなった後も、同様とする。
2 審査会の委員は、公平かつ適切にその職務を遂行しなければならない。
(措置等)
第15条 議会は、第10条第4項又は第9項の規定による報告を尊重し、必要な措置を講ずる議決等をするものとする。
2 審査対象議員は、第10条第9項の規定による報告において、政治倫理規準違反行為があったと指摘されたときは、これを尊重して、政治倫理の確保のために必要な措置を講じなければならない。
3 議長は、審査対象議員が前項の措置を自ら講じないときは、議会の名誉と品位を守り、市民の信頼を回復するため、必要な措置を講ずるものとする。
4 議長は、前2項の規定による措置の内容を公表しなければならない。
(審査結果及び審査対象議員に対する措置の通知及び公表)
第16条 議長は、前条第1項の議決等がなされた後、速やかに審査要求書を提出した者及び審査対象議員に議決等の結果を送付するとともに、その概要を公表するものとする。
(起訴後の説明会の開催等)
第17条 議員は、次に掲げる罪により起訴された場合は、市民に対する説明会の開催を議長に求め、説明会に出席し、自ら釈明しなければならない。
(1) 刑法(明治40年法律第45号)第197条から第197条の4まで及び第198条に規定する贈収賄罪
(2) 公職にある者等のあっせん行為による利得等の処罰に関する法律(平成12年法律第130号)に規定する犯罪
(3) 前2号に定めるもののほか、議員の職務に関連する犯罪
2 前項の説明会が開催されないときは、市民は、議長に説明会の開催を請求することができる。
3 前項の規定による請求は、当該議員が起訴された日の翌日から起算して2月以内に行わなければならない。
4 議長は、第2項の規定による請求があったときは、説明会を開催しなければならない。この場合において、当該議員は、説明会に出席し、説明をしなければならない。
5 市民は、説明会において、当該議員が行った説明に関し当該議員に質問することができる。
(有罪確定に伴う辞職等)
第 18 条 議員は、前条第 1 項各号に掲げる罪について有罪が確定したときは、公職選挙法第 11 条第 1 項及び地方自治法第 127 条第 1 項の規定により失職する場合を除き、市民全体の代表者としての品位及び名誉を守り、並びに市政に対する市民の信頼を回復するため、辞職するものとする。
2 議会は、前項の規定による辞職手続をとらない議員に対し、議会の名誉と品位を守り、市民の信頼を回復するため、辞職を勧告するものとする。
(議員報酬の支給停止)
第19条 議員が、第17条第1項各号に掲げる罪の被疑者又は被告人として逮捕され、勾留され、その他身体を拘束する処分を受けたときは、別に定める条例により、議員報酬の支給を停止する。
(委任)
第20条 この条例の施行に関し必要な事項は、議長が別に定める。
付 則
この条例は、公布の日から施行する。
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