市議選に落選して1番悲しかった日
昨日、ニュースを見ながら、私は久しぶりに無力感で落ち込みました。
市議会議員選挙に落選した日も、もちろん悔しかった。応援していただいた皆さんに申し訳ないという思いもありました。
しかし、もしかすると、議員を辞めてから一番悲しかった日は昨日だったかもしれません。
その理由は、2026年9月1日、那覇市議会が、8月18日に那覇空港で発生した航空自衛隊F15戦闘機の事故を受け、国への抗議決議と意見書を全会一致で可決したというニュースでした。共同通信などの報道によれば、事故原因の究明や再発防止に加え、「米軍機の使用を認めないこと」「那覇空港の民間専用化」も求めています。
事故そのものについて、軽く考えるつもりは全くありません。
8月18日、航空自衛隊那覇基地所属のF15戦闘機が那覇空港に着陸した際、左主脚を破損して滑走路上で動けなくなり、B滑走路が約4時間閉鎖されました。那覇市議会の決議では、欠航や遅延により少なくとも7,000人以上に影響が出たとされています。
当然、原因は徹底的に究明しなければなりません。
元航空自衛官としても、航空事故や重大インシデントについて「自衛隊だから仕方がない」などという考えは一切ありません。むしろ、航空の世界では一つの小さなミスや不具合が大きな事故につながります。
だからこそ、再発防止は厳しく求めるべきです。
私が問題にしたいのは、そこから先です。
今回、那覇市議会は次の3項目を政府などに要請しました。
⓵事故原因の徹底究明と実効ある再発防止策を講ずること。
⓶過密な那覇空港における米軍機の使用を認めないこと。
⓷民間航空機利用者の安全確保、観光と経済の発展のため、那覇空港の民間専用化を実現すること。
これは私にとって、非常に重い内容でした。
自衛隊関係者から叱られた
ニュースが出た後、主として県外の自衛隊関係者や、自衛隊を支援している方々から連絡をいただきました。
厳しい言葉もありました。
「那覇市議会として、全会一致とはどういうことだ」
「前回の古賀千景参議院議員の自衛隊をめぐる発言の時には、那覇市議会は抗議決議を出していないじゃないか。それなのに、今回これはどういうことだ」
古賀千景参議院議員は今年6月の参議院決算委員会で、自衛隊への入隊をめぐる発言を行い、その場で撤回・謝罪しました。その後、立憲民主党も「自衛官及びその家族、関係者の心情に配慮を欠く」発言だったとして厳重注意処分を公表しています。
昨年から自衛隊関係団体の先輩方と公正な報道の記者会見を行ったり
県議議会へ「立憲民主党の古賀千景参院議員」の発言に対する沖縄県議会議長への申し入れを行ってきました。

関連記事はこちら
そうした経緯もあって、県外の自衛隊関係者からすれば、
「那覇市議会はどうなっているんだ」
と思ったとのことでした。
そして私は、その方々に言わなければなりませんでした。
「実は、私は昨年の市議会議員選挙で落選して、今はもう那覇市議会議員ではありません」
この言葉を口にした時、本当に悔しかった。
選挙に落ちた瞬間よりも、自分が議場にいないことをこれほど悔しく感じたことはありませんでした。
もし議員としてあの議場にいたなら、私は少なくとも、この文言のまま全会一致になることについて、きちんと議論したかったと思います。
私が議員であった頃の交渉と意見書の対立
2018年の那覇市議会では、実際に議論がありました。
2018年6月14日、航空自衛隊那覇基地所属のF15戦闘機2機が緊急発進する際、管制官の許可を得ず滑走路へ進入し、重大インシデントと認定された事案がありました。
その後の6月定例会では、革新系議員から「那覇空港での航空自衛隊機を起因とする重大インシデント発生に抗議し、那覇空港の民間専用化を求める意見書」が提出されました
が提出されました。
しかし、この案は賛成少数で否決されています。
このときに、「那覇空港の民間専用化の実現を強く求める」という言葉を認めるすることはできませんでしたので、自民党会派内で相談して対案を作成し「那覇基地所属F-15戦闘機の緊急発進時における重大インシデント事案に関する意見書」を那覇空港を提出しました。
こちらは賛成多数で可決されました。
可決された文書では、原因究明、公表、再発防止を強く求めていますが、最終的な要求事項に「那覇空港の民間専用化」は入っていません。
つまり、事故への抗議と安全確保を求めることと、那覇空港を民間専用化することは、分けて議論されたのです。
私は、このプロセスこそ議会に必要だと思っています。
さらに同年7月、那覇基地所属のE2C早期警戒機のタイヤが破損し、滑走路が約1時間40分閉鎖される事故が発生しました。
8月21日に那覇市議会が可決した「那覇空港における自衛隊機の事故に関する意見書」では、本文中に民間専用化についての記述はあります。
しかし最終的な要求は、事故原因の究明、調査結果の公表、実効性ある再発防止策の実施です。
民間専用化そのものを政府への要求事項として明記しているわけではありません。この時に連続した航空機に関する事案であったために、革新系を含めた様々な会派と調整の末、要望はしないが本文中に記載するという点で合致しました。
実際のところ、初当選して1年目のところであり、かなり苦戦したことを覚えていますが、奥間亮議員と知恵を出しながら起案したことを思い出します。
このように過去の那覇市議会では、安全確保という共通目的を持ちながらも、どこまでを議会の意思として盛り込むのかについて調整し、異なる案を出し、採決してきた経緯があります。
だからこそ、私は今回の**「全会一致」**という結果に強い違和感を覚えました。
⓵再発防止は当然求めるべき
今回の決議の⓵、
「事故原因の徹底究明と実効ある再発防止策を講ずること」
については、私も異論はありません。
航空機事故は、一歩間違えば多くの生命を奪います。
自衛隊であろうが、民間航空会社であろうが、安全運航について妥協があってはいけません。
むしろ元自衛官として、徹底した原因究明と再発防止を求めたいと思います。
問題は⓶と⓷です。
⓶「過密な那覇空港では米軍機の使用を認めない」で本当にいいのか
私はまず、「過密」の定義は何なのかと考えます。
何便以上なら過密なのか。どの時間帯なのか。平時だけなのか。災害や有事も含むのか。今回の決議には、その条件が示されていません。
さらに重要なのは、緊急事態です。
日米防衛協力のための指針には、日本国民や米国国民など非戦闘員を第三国から安全な地域へ退避させる際、日米両政府が協力し、輸送手段や施設など双方の能力を相互補完的に使用することが明記されています。
つまり、安全保障上の危機においては、日米が輸送能力を補完し合うこと自体が想定されています。
では、仮に沖縄周辺で重大な有事やその前兆が発生した時はどうするのでしょうか。
民間航空機や自衛隊の輸送能力だけでは足りず、米側の航空輸送能力を活用することで県民の生命を救える状況になったとしても、
「那覇空港では米軍機の使用を認めない」
と言い切るのでしょうか。もちろん、平時における米軍機の使用と、有事・災害・人道上の緊急使用は分けて議論できます。
だからこそ、私はこのような例外や条件を書かず、一律に「認めない」とする言葉の選び方には疑問があります。
⓷「民間専用化」とは、どこまでを意味するのか
そして、最も疑問なのが「民間専用化」です。
本当に完全な民間専用空港にするというのであれば、自衛隊だけを対象にする話なのでしょうか。
那覇には海上保安庁の那覇航空基地があり、海上保安庁航空機は沖縄の広い海域で治安維持、捜索救難、災害対応などを担っています。
沖縄県ではドクターヘリに加え、自衛隊ヘリ等による離島からの急患空輸が救急医療体制を支えています。
さらに県は現在、消防防災ヘリコプターの運用開始に向け、運用要綱や出動基準、ヘリポートなどの検討を進めています。
では、「民間専用化」とした時、
警察航空機はどうするのか。
海上保安庁はどうするのか。
急患空輸はどうするのか。
防災ヘリはどうするのか。
大規模災害時の自衛隊航空機はどうするのか。
今回の決議を読んでも、そこまでは書かれていません。だから私は聞きたいのです。
「民間専用化」という言葉を、どこまで想定して全会一致で可決したのでしょうか。
議会の決議はSNSへの投稿とは違います。
一度可決されれば、正式な**「那覇市議会の意思」**として残ります。
だからこそ、一つ一つの言葉には慎重でなければならないと私は思います。
議場にいないことが、これほど悔しかった日はない
今回、なぜ2018年のように異なる考え方を持つ議員同士で文言を調整し、必要であれば別案を出し、それぞれの立場を明確にする形にならなかったのか。
私は現在、那覇市議会議員ではありません。
したがって、今回の文案作成や議会内部でどのような調整が行われたのかは分かりません。
公開されている資料だけで、その内部経緯まで断定することはできません。
ただ、安全確保と再発防止を求めることと、安全保障上の機能まで否定することは別の話です。
私は、那覇自民党の皆さんの国防や安全保障に対する基本的な考え方そのものが変わってしまったのだとは信じたくありません。
今回の決議を受け、自民党の防衛感覚に違和感を覚えた方から
「古謝に入れても一緒だろ」
「どうせ何も変わらないんだろ」
という声も、私のところには届いています。しかし、私はそうは思いません。
沖縄は、日本の南西地域に位置する安全保障上極めて重要な場所です。
その中で、県民の安全と生活を守ること、観光や経済を守ること、そして日本の国防を考えることは、どれか一つを選ぶ話ではありません。
全部を考えなければなりません。
古謝候補も、沖縄が置かれている安全保障環境や国防の重要性について理解していますし、私はそう考えています。
だから私は今回の決議への違和感と、知事選の選択を同じものとして思っていただきたくはありません。
選挙は、投票しなければ何も変わりません。
私は市議選に落選しました。
そして今回、初めて、
「あの議場に自分がいない」
という現実を、これほど悔しく思いました。
もう一度言います。
事故原因の究明と再発防止は、徹底して求めるべきです。
しかし同時に、沖縄の安全保障、災害対応、救急医療、有事における県民避難まで考えた上で言葉を選ぶことも、議会の責任です。
安易に選んだ一つの言葉が、議会の意思として何十年も残ることがあります。
だからこそ政治には、議論が必要です。
そして選挙には、一票が必要です。
私は最後まで、古謝げんた候補を応援します。
参考資料・根拠
共同通信/47NEWS「空自機の空港滑走路閉鎖に抗議 那覇市議会、民間専用を要求」
47NEWSの記事
同記事内容は共同通信配信先でも確認できます。
那覇市議会「那覇空港で発生した航空自衛隊機事故に対する抗議と、那覇空港の民間専用化の実現を求める抗議決議」2026年9月1日
那覇市議会・抗議決議全文
那覇市議会「意見書・決議(平成28年から令和2年まで)」
那覇空港での航空自衛隊機を起因とする重大インシデント発生に抗議し、那覇空港の民間専用化を求める意見書
那覇市議会「那覇基地所属F-15戦闘機の緊急発進時における重大インシデント事案に関する意見書」2018年6月25日
2018年6月・可決された意見書
那覇市議会「那覇空港における自衛隊機の事故に関する意見書」2018年8月21日
2018年8月・意見書全文
防衛省「日米防衛協力のための指針(2015年4月27日)」
非戦闘員の退避について、日米間で輸送手段・施設等を相互補完的に使用することなどが記載されています。
防衛省・日米防衛協力のための指針
海上保安庁第十一管区海上保安本部「第十一管区海上保安本部について」
第十一管区海上保安本部

コメント